M28はBricasti Designが生み出した、先進的な設計手法に基づくAB級パワーアンプです。M28 Special Edition(M28SE)はM28をベースとして、音質および動作安定性を格段に向上させたスペシャルモデルです。開発にあたっては、旧マドリガル・ラボラトリーズのスタッフが培ってきた設計技術と、最新のプロオーディオ環境での経験が存分に生かされています。
M28SEの各部は合計240,000uFもの低ESRコンデンサー・バンクを採用する超強力な電源部によって駆動されており、高リニアリティと大出力(8Ω時200W、4Ω時400W、2Ω時800W)を実現するほか、MHz帯まで増幅可能な超広帯域設計となっています。加えて、XLR入力からスピーカー出力にいたるまで完全なバランス設計/全段差動伝送を徹底することで、高いチャンネルセパレーションを実現しています。
また、高い品質を誇る筐体は、天板、サイドパネル、底板にいたるまで全てCNCマシンによりアルミニウム合金のブロックを切削加工したもので、レーザー加工によってロゴが刻印されています。
徹底的なフルバランス設計
M28SEは全段差動設計のモノブロック・パワーアンプで、XLR入力端子からスピーカー出力まで完全なバランス信号伝送を実現しています。当社のM1SE DAコンバーターやM12ソースコントローラーのようにソース機器がバランス設計の場合に、最高の結果(すなわち最高の音質)を享受することができます。これによって、入力からスピーカーまで完全なバランス伝送が可能となりますが、こうした完全バランス伝送設計を貫いている事例は少なく(注:特にボリューム部)、当社製品のユニークな特長となっています。
マッチドペア部品で構成される差動回路
このような完全バランス伝送を実現するために、M28SEは完全に独立した2つの差動信号伝送シグナルパスを持っています。実際には1つシャーシ上に2つのアンプが存在し、1つの信号経路は反転信号、もう1つの信号経路が非反転信号に割り当てられています。この完全独立の差動信号伝送は、マッチドペア部品で構成され、厳密に設計された電圧増幅段の完全差動入力で始まります。このステージは信号経路において非常に重要な部分で、この部分がきちんとコントロールできないと、+信号と-信号間の位相が乱れる原因となってしまいます。
次に合計24個の選別品のマッチドペア・バイポーラトランジスタによる電流増幅段に入ります。これらのトランジスタは、各12個ずつが、反転信号、非反転信号に使用されます。
各差動増幅回路用にセパレート設計を採用した電源部
M28SEのバランス設計思想は電源設計にも適用されています。総容量240、000uFのコンデンサバンクを2基、1つのトランスで2系統の電源供給が行える独立2次巻き線トランスを装備しています。SEバージョンに施された数多くの改良点の1つが大電流トランスの採用で、M28SEは2Ω負荷で800Wrm以上の出力を誇ります。
合計4アンプでスピーカーを正確にドライブ
M28SEでは完全独立なバランス信号伝送を実現しています。つまり1ペアのM28を使用するということは、それぞれの信号経路(反転・非反転)の各位相(+・-)用に1つのアンプとなり、実質的に4台のアンプを所有していることになります。これによりスピーカーの逆起電力を正確にコントロールすることで、低音の解像度、より低い周波数の再現性、中高域のディテール再現の緻密さを実現しています。
MHz帯まで増幅可能な超広帯域設計
M28SEはいわゆる広帯域アンプと呼称される製品です。一般に、オーディオ業界では「広帯域」の意味を20kHzまでフラットであることとしていますが、M28SEでいう広帯域とは、「200kHzまでフラットでMHz帯まで伸びていること」を意味しています。M28SEの出力段はローパスフィルターを持たず、空間再現が豊かで透明な音を実現しています。このように超音波帯域の応答特性を持つことの最も重要な点は、M28SEは10kHzの矩形波をオーバーシュートやリンギングなしに正確に再現することができるということです。その結果、正確なトランジェント特性が得られ、音楽性豊かなアナログサウンドをお楽しみいただけます。
圧倒的物量を誇る出力段
低ESRコンデンサーで構成された総計240,000uFのコンデンサー・バンク
M28SEの各出力段は、低ESR(等価直列抵抗)コンデンサーで構成された総計240,000uFのコンデンサー・バンクによって電源供給されています。このコンデンサー・バンクは、最短配線の4本の10AWG極太ケーブルで出力トランジスタに接続されています。これにより、出力トランジスタがキャパシター内の利用可能な電流を供給する能力に制限はありません。
また、消費電力を監視する保護回路はオーディオ信号経路外にあり、保護回路がオーディオ信号の品質を低下させるといった心配はありません。異常を検出すると保護回路が働きアンプの電源を切りますが、このようなプロテクション動作が音楽プログラム由来で発生することのない設計となっています。
金メッキ削り出し部材と圧着によるはんだレス設計の出力段
増幅段からリアパネルまでの出力信号接続は#8の撚り銅線の二重線で構成され、このパス内にあるすべてのコネクタとマウントデバイスには、社内工場で切削加工を行った銅削り出し部材に金メッキを施したものを使用しています。これらは全て金属同士を密着させる形でコネクタへのケーブルの正確な圧着によって接続が行われ、重要な信号経路ではんだが使用されない設計となっています。
低インピーダンスと高ダンピングファクターのための自社製スピーカー・ターミナル
Bricasti Designが理想とする高電流の低インピーダンス出力性能を達成するため、M28SEのスピーカー端子には自社設計・製造したものを採用しています。このスピーカー端子は銅を切削加工し、金メッキ処理をしたものです。端子をリアパネルに取り付けるナットも自社で切削加工したものを使用するなど、品質への拘りを徹底しています。この自社製ナットは金メッキされた圧着端子をM28SE内部のコネクタに取り付ける際にも使用されています。さらに金メッキの厚みも40ミクロンとし、スピーカー端子とスピーカーケーブルのYラグ端子との良好な面接触を保証しています。
増幅段だけでなく信号経路となる各種高品質パーツの投入によって、M28SEは低出力インピーダンスと高ダンピングファクターを非常に高い次元で実現するほか、大電流の供給が可能となりました。M28SEはスピーカーのコントロール能力や過渡特性に優れ、歪みの非常に少ない低音コントロールを実現します。
ノイズと振動に配慮した強固な筐体構造
Bricasti Designは、その豊富な経験と自社開発技術により、M28SEの生産に必要な部品を自社でカスタム製作しており、設計においても性能においても全く妥協のない、厳格な適合性と美しいデザインを持つ製品を生み出しています。
アルミニウムブロックからの切削加工により生み出される各種パーツ
M28のすべての機構部品は、アルミニウムブロックから切削加工されます。 プレス加工を用いた金属部品を使用しておらず、操作ボタンのキャップやインシュレーターもすべて社内設備で切削加工したものを採用しています。
M28SEのシャーシ(ボトムプレート)は、1つのアルミインゴットから切削されており、基板取付ポストも別部品ではなくM28の底面と一体で削り出されています。特に、M28SEのヒートシンク側は、3インチ(76㎜)厚のアルミニウムブロックから切削加工されたもので、熱安定性と優れた放熱性を実現しています。
自社設計・生産によるカスタム・スタビライザーによりトランジスタを強固にマウント
アンプブロックのパワートランジスタは、優れた直接熱伝達と低振動のためにM28の側面に直接取り付けられています。振動コントロールの最適化と冷却性能の高効率化を実現するため、切削加工したカスタム品のパワー・トランジスター・スタビライザーを全てのトランジスタに渡るように装着することで、振動を抑制しています。ヒートシンクへの取付けは、トランジスタ・メーカーの指定値を厳格に守って行われています。精密フライス加工されたヒートシンクは、トランジスタ表面にほぼ完璧に接触しています。これにより、熱の安定した伝達、低振動、すべてのトランジスタに渡り均一な圧力が加わることを実現しています。
Stillpoints社製振動アイソレーション・ポストを搭載したインシュレーター
M28SEのもう一つの特長は、Stillpoints社製の振動アイソレーション・ポストを使用していることです。このアイソレーション・ポストはインシュレーターに精密に組み込まれ、電磁誘導で発生する振動や外力による振動を絶縁します。これにより、M28の美しいデザインを全く損なうことなく、Stillpoints社の優れた振動減衰機能を付与しています。
優れたスピーカー保護機構
M28SEは約240 Wrms(8Ω負荷時)を超える音楽信号を圧縮する精巧なソフトクリッピング回路を装備しています。これは、電圧駆動段にてバッファされ音楽信号として検出処理されるため、負荷インピーダンスに応じて最適な、例えば4Ω負荷では480Wrmsで動作します。また、一般的にはソフトクリッピングの作動時に高調波歪みが生じますが、ソフトクリッピングは穏やかに処理を行うため、結果的に高次の歪みを生じさせない設計になっています。このようにM28SEは注意深く設計されたスピーカー保護機構を備えており、仕様に規定された定格電力までリニアリティを保ち動作する設計となっています。