スタジオ・レコーディングにおける音源の低域を捉え、これを強調するための新しい手段の提案が「Wormhole」(ワームホール)マイクロフォンです。伝説的なプロデューサー、シルヴィア・マシィーが開拓したガーデン・ホース・マイクのテクニックから着想を得た“低域の捕捉”にフォーカスするこのマイクロフォンは、カプセルの前面に1.8m(6フィート)のホースが取り付けられているファンタム電源駆動のコンデンサー・マイクロフォンです。ホース部は気密性が高く、高域と中域を減衰させ低域の信号を通す物理的なEQのような役割を果たすため、このホースと無指向性のピックアップ・パターンを組み合わせる「Wormhole」は広い範囲からの低周波を捕らえることができます。
「Wormhole」では、隣の部屋で誰かが大音量で楽器を演奏しているのを聞いているようなサウンドが得られ、すべてのロー・エンドとミッド・エンドはミュートされます。「Wormhole」単体で聞けるサウンドは珍しいものですが、「Wormhole」をサブキック・マイクと同じように考えて音源に近接するマイクとミックスすると、実に活き活きとしたサウンドを得ることができます。しかし「Wormhole」はキックドラム専用のマイクではないため、ドラムキットすべての低周波を捕らえてサウンド全体にふくよかさと重さを加味することができます。
もっとも推奨される使用方法はドラムキットのレコーディングです。「Wormhole」をキットの前の床に置き、ホースをキックドラムの周りに巻いた後にフロアタムの下で終端させるとキックドラムだけでなく、ラックタム、フロアタム、そしてスネアにパンチのあるローエンドを捕らえることができます。「Wormhole」のトラックと通常のドラムマイクをミックスすると、キット全体のローエンドがとても心地よく変化することに気づくはずです。「Wormhole」を使うことですべてを大きく聞かせられるようになります。
使用上の注意
「Wormhole」はかなりユニークなマイクであることから、使用に際してはいくつか注意すべき点があります。低周波の感度が高いため、ライブ・パフォーマンスの環境ではなく、スタジオ・レコーディングでの使用を推奨します。また、ひとつの楽器の録音に対して使用するのが適切です。ドラムキットやアンプ単体を録音する場合には完璧な結果が得られますが、ベースアンプ、ギターアンプ、ドラムキットを同じ空間で一緒に演奏する際には、部屋にあるすべてのものの低周波を拾ってしまうことになるため避けてください。
「Wormhole」のホース部分は物理的な接触に非常に敏感で、コンタクト・マイクのような役割を果たします。これにより創造的なサウンド作りの可能性は広がりますが、使用の際には、ホース部に何か触れるものがないかを確認してください。ケーブル類は問題になりませんが、シンバル・スタンドやキック・ドラムの脚などが当たっていると、これらの物体の共鳴を拾うことになるため避けてください。