究極の音質
ヴィンテージ、モダンを問わず、原音に忠実な音質を追求するデジタル・コンプレッサーにとって、エイリアシングは最大の難敵です。
エイリアシングとは、信号の周波数が現在のサンプル・レートがサポートできる最大周波数を超えたときに発生する、高域のスペクトラムにおけるエラー信号のことです。
「ミラーリング」はデジタルの世界にしか存在しない歪みであり、発生すると見た目も音も「人工的」で不自然になります。多くのデジタル・コンプレッサーがアナログ・コンプレッサーほど良い音で鳴らない最大の理由のひとつとされています。
コンプレッサーは、高周波倍音を発生させるエフェクトです。したがって、『CENOZOIX COMPRESSOR』のエイリアシング抑制は、私たちの永遠の使命である「音質」を追求する上で最優先事項となります。
サンプル・レート88200Hzの20-40kHzサイン・スイープ信号のスペクトラム。
サンプルレート44100Hzの20-40kHz正弦波掃引信号のスペクトラム。22050 Hz以上の信号は、より低い周波数に「ミラーリング」が発生しています。
ADAA – Anti-Derivative Anti-Aliasing
Anti-Derivative Anti-Aliasing は、オーバーサンプリングを使用せずに、ノンリニア・オーディオ処理におけるエイリアシングの発生を低減する方法です。これは、ディスクリートサンプリングのポイントを連続信号に変換し、システムに無制限のサンプルレートを提供することでエイリアシングを著しく低減します。この技法は当初、Native Instruments社によって発明され、その後、徐々に多くのウェーブシェイパーに利用されるようになりました。
『CENOZOIX COMPRESSOR』は、ADAAを初めてコンプレッサーに採用しました!ウェーブシェイパーの技術がコンプレッサーでどのように機能するのかというと、コンプレッサーにはエンベロープ・ディテクタの心臓部であるレクチファイア(整流器)という非常に重要なコンポーネントがあります。各レクチファイアは、コンプレッサーのアルゴリズムにおいてウェーブシェイパーとして機能します。ADAAを適用することで、『CENOZOIX COMPRESSOR』のすべてのレクチファイアはエイリアシングとデジタル・ディストーションを大幅に抑制することができます。
通常のコンプレッサーのエンベロープ・ディテクタで処理されたサインスイープ信号
同じサイン・スイープ信号をCenozoixのエンベロープ・ディテクタで処理したもの
Adaptive Oversampling Interpolation Envelope Detection
現在、ADAAは高周波数における実質的なエイリアシングを解決していますが、それはレクチファイアにしか機能していません。アタック/リリースは、高周波域で大量のエイリアシングをもたらすもう1つの要因です。各アタック/リリース・スイッチは、ゲインリダクション・カーブに急激な変化をもたらします。これらを滑らかにする唯一の方法は、極めて高いサンプルレートで信号を処理することです。理論的には、可聴エイリアシングを完全に回避するには、デジタル・コンプレッサーは少なくとも32倍のオーバーサンプリングで動作する必要があり、CPUにとっては拷問に等しくなります。
この問題に対処するため、私たちはAdaptive Oversampling Interpolation技術を開発しました。『CENOZOIX COMPRESSOR』は、オーバーサンプリングが必要な時、つまりアタック/リリースの切り替え時のみオーバーサンプリングをオンにし、それ以外の時間は元のサンプリングレートで動作します。この技術により、合理的な計算コストでエイリアシングを可能な限り低減することができます。
『CENOZOIX COMPRESSOR』が備えるエイリアシングを抑制する数々のソリューションにより、デジタル・コンプレッサーのプラスチック / ガラスのような粗い質感に別れを告げ、クリーンで透明感のある、アナログ感のあるサウンドを取り戻すことができます。
通常のコンプレッサーで処理した300Hzのサイン波の高調波歪み
『CENOZOIX COMPRESSOR』で処理した300Hzのサイン波の高調波歪み
24種類のユニークなコンプレッサー・スタイル
世の中のコンプレッサーはどれも一様ではなく、それぞれが独自のスタイルを持っています。『CENOZOIX COMPRESSOR』は、多様なコンプレッサー・スタイルを提供し、「最高」を主張することよりも幅広い調整機能を重視しています。
『CENOZOIX COMPRESSOR』は、12種類のクラシック・ヴィンテージ・スタイルと12種類の丹念に作り込まれたモダン・スタイル、合計24種類のコンプレッサー・スタイルを提供し、それぞれが多様なニーズや好みに合うように調整されています。
12種類のビンテージスタイル
Brit VCA
タイトでパンチのあるサウンドで知られ、幅広いジャンルや楽器に対応するクラシック・チャンネル・ストリップのコンプレッサーにインスパイアされたモデル。
Glue VCA
Glueのニックネームで知られるクラシックVCAコンプレッサーにインスパイアされたモデル。ミックス・バスにインサートすると、トラックを接着剤のように”くっつけ”、まとまりのあるミックスを作り出します。
US VCA
様々な楽器に対応するアメリカン・クラシックVCAコンプレッサーにインスパイアされたモデル。パンチの効いたトランジェント・レスポンスで、GlueやBrit VCAスタイルとは正反対の「ストレート」なサウンドが特徴。
Black VCA
ブラック・カラーのクラシックVCAコンプレッサーにインスパイアされており、アタック・ノブがないにもかかわらず、他のモデルでは再現できないユニークなトランジェントを生み出します。
Red VCA
クリーンで透明で温かみのあるサウンドで知られる”赤色”のVCAコンプレッサーにインスパイアされています。
Dist.VCA
豊かなサチュレーションを生み出し、サウンドをタイトで厚みのあるものにするクラシックVCAコンプレッサーにインスパイアされています。
Black FET & Blue FET
クラシックFETコンプレッサーの2バージョンからインスパイアされたモデル。BlackとBlueのサウンドは似ていますが、少し異なります。ボーカルやドラム、ギター、ベースなど、あらゆるサウンドに対応します。
Vintage Opto
高名なOptoコンプレッサーにインスパイアされたモデル。音質だけでなく、ユニークな マルチステージ・アタックとリリースが特徴です。
Diode-Bridge
高名なDiode-Bridgeコンプレッサー・モデルにインスパイアされたモデル。強くコンプレッションすればするほど、サウンドはオープンになります。
Virtual-Mu
クラシック・チューブ・コンプレッサーにインスパイアされたモデルです。豊かな偶数次高調波歪みで知られ、ふくよかなローエンドと心地よいハイエンドをもたらします。
Vintage Tube
豊かな高調波歪みで知られるクラシックなビンテージ・チューブ・コンプレッサーにインスパイアされ、温かみと深く潜るローエンドをもたらします。様々なサウンド、特にベースのコンプレッションに適しています。
12種類のモダンスタイル
Clean ( クリーン ) :科学的に「正しい」コンプレッション・スタイルで、あらゆる「特殊な処理」を行いません。Cleanは本ソフトウェアのデフォルト・スタイルで、すべてのパラメータを調整できます。理論上、Tight, Sensitiveなどを調整すれば、このスタイルであらゆるコンプレッションを実現できます。
Tight ( タイト ) :Cleanに近く、内部パラメーターを調整してよりタイトでモダンなサウンドにできます。ローエンドがコンプレッションされると、アタック・タイムとリリース・タイムが自動的に短くなり、タイト感が増します。ただし、これにより低域の歪みが増加し、自然さが犠牲になる点に注意してください。
Open ( オープン ) :広汎な目的に適し、ワイド・オープンなサウンドを得やすい。調整できないパラメータがある点に注意してください。
Natural ( ナチュラル ) :Openに似ていますが、より自然で、控えめなコンプレッションのサウンドです。各種アコースティック楽器、特に弦楽四重奏のようなレガート奏法を行う楽器にお勧めします。
Vocal ( ボーカル ) :Cleanに似ていますが、ボーカル向けです。
Pluck ( プラック ) :Cleanとよく似ていますが、ギターやハープなどの撥弦楽器に適しています。アタック・セクションは、撥弦楽器のトランジェントに「魔法」を与えるような、強めの適応調整で適用されます。
Smooth ( スムース ) :Naturalに似ていますが、よりスムーズです。
Drum ( ドラム ) :少しダッキング感のある「ハード」なトランジェントを生成し、よりパワフルなサウンドを生み出します。ドラムのサスティンを伸ばすために、若干の調整でリリースが適用されます。このスタイルではトランジェントが強くなるため、Clampパラメータを大きく設定した上でコンプレッションを強め、「ボリューム」を「歪み量」に変換するのがお勧めです。
Hard ( ハード ) :「ハード」なアタックでサウンドを激しくドライブする、最もアグレッシブなスタイルです。ハードな加工が要求されるトラックに最適です。
Loud ( ラウド ) :Openとよく似ていますが、よりアグレッシブです。自然さを少し犠牲にすることで、「音の壁」効果を実現します。このスタイルを使用する場合、強めのレシオで大胆にコンプレッションし、メイクアップ・ゲインを上げることでよりラウドなサウンドを得られます。ユーザーが設定するアタックとリリースは、あくまで「目安」に過ぎません。 エンジン内部のアダプティブ・アタックとリリース調整により、より多くの効果が得られます。
Bus ( バス ) :マスタリングに似ていますが、コンプレッションの痕跡を強めに残し、Glue感を強調します。同時に、タイトなサウンドで、MasteringスタイルとTightスタイルをブレンドしたような感触があります。各種のバス/グループ・チャンネルに適しています。
Mastering ( マスタリング ):ダイナミクスを制限しながらコンプレッションを最小限に抑えます。同時にGlueのような感触で、トラック間の音量バランスを崩さないようにします。マスタリングに適していますが、各種のグループ・トラックにも使用できます。