T-RackS Stealth Limiterは、サウンドの豊かなダイナミクスや細やかなニュアンスを損なわずに、アナログ変換時にクリップ・ノイズを引き起こす可能性のあるインターサンプル・ピークを抑え、ラウドネス感を維持しつつも、明瞭なマスターを仕上げることを可能にした、新しいタイプのマスタリング・ピーク・リミッターです。
ラウドネス競争
過去数十年間に渡って、ボリューム・レベルは可能な限り引き上げられ、ラウドネス感を競い合うことが今日の音楽制作におけるある種の標準となってきました。ラウドネス感を引き上げるためにコンプレッサーやリミッターを過度に使った結果、音が歪んだり、平板になったりと、音楽表現が損なわれてしまう傾向にありました。T-RackS
Stealth Limiterは、こうした問題に応えるために開発されました。
「ステルス(透明)」な処理
T-RackS Stealth Limiterは、スマートなレベル・トラッキング・アルゴリズムにより、ルックアヘッド・タイプのファースト・アタック・エンベロープ・リミッターのような音のつぶれ、過度な圧縮感を避けながら、瞬間瞬間のレベルを設定したシーリング値に抑えることを実現しました。その結果、透明感のある、豊かなダイナミクス表現を維持した、明瞭なマスターを仕上げることが可能になります。
新しいアプローチ
通常のデジタル・リミッターやクリッパーを用いて、データ上ではピークを0.0dB以下に抑えても、実際にアナログ音声として再生してみると、スパイク・ノイズが発生してしまうことがよくあります。
これは、デジタルからアナログ音声に変換する際に、デジタル・データとしては0.0dB以下のサンプルとサンプルの間にデータが補間され、クリップ、歪みの要因となる、0.0dBを越えたピークが発生してしまう可能性があるからです。
T-RackS Stealth Limiterでは、再生機器のサンプル間のデータ補間を予測して抑える先進のインターサンプル・ピーク・リミット・アルゴリズムにより、アナログ変換時に生じるクリップを抑えることができます。T-RackS Stealth LimiterでISPL(インターサンプル・ピーク・リミッター機能)をOnにすることで、DAWでモニターしている時はクリップしていなかったのにCD、AAC、MP3プレイヤーでの再生時にクリップしてしまう、といった問題から開放されるのです。
使いやすい直観的なユーザー・インターフェース
T-RackS Stealth Limiterのユーザー・インターフェースは、直観的に操作できるようにデザインされています。INPUTで入力時のブースト量を決め、OUTPUT CELLINGでピークの最大値を設定するだけで、求めるラウドネスで、シーリング値を越えることのないマスターを仕上げることができます。もちろん、サウンドの色彩感の異なる、アドバンスド・モードのオプションも用意されています。
4種類の動作モードを装備
T-RackS Stealth Limiterでは、求めるサウンドの色彩感、マスタリングの目的によって設定可能な4種類の動作モードのオプションが用意されています。
TIGHT
基本モードであるTIGHTモードでは、素材が持つ色彩感やダイナミス表現を損なうことなく、透明なピーク・リミットを行うことができます。リミッターの設定が強度に設定されていたとしても、「圧縮」されたようなサウンドにはなりません。
BALANCED
BALANCEDモードでは、TIGHTモードと比べれば、ダイナミクスを若干圧縮しながら、あくまでもナチュラルな響きとして許容される範囲内でピーク・リミットを行います。通常はTIGHTモードとの違いはほとんど聴き取ることはできないでしょう。しかし、音量が大きくなるにつれ、その違いを聴き取ることができるようになるでしょう。
HARMONICS 1
HARMONICS 1は、倍音構成に微妙な変化を与えることで、サウンドに色彩感を加え、デジタル臭さを抑えて心地よいアナログ風のサウンドを求める時に最適なモードです。
HARMONICS 2
HARMONICS 2では、HARMONICS 1同様に、サウンドのキャラクターに微妙な変化が加わります。勢いやパンチが物足りない素材にアナログ機器のようなブーストを施すことができます。
T-RackS Stealth Limiterでは、Unity Gain MonitorをOnにしてBypassボタンを切り替えると、処理前、処理後のサウンドを、同じ音量で比較試聴することができます。モードの違いによるサウンドの変化を耳で確認することができます。
可聴下周波数帯域の重低音をカットするInfrasonic filterをOnにすることで、22Hz 4次ハイパス・フィルターにより不要なリミッター動作を回避させ、コンピュータのCPUに与える負荷を軽減することもできます。
こうしたアドバンスド・モードの機能を組み合わせることで、T-RackS Stealth Limiterの秘めたる可能性を最大限に引き出すことができるのです。マスタリングにおいて、まさしくステルスな秘密兵器となってくれることでしょう。
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