Oxford DeClickerは、DePop(ポップノイズの除去)、DeClick(クリックノイズの除去)、DeCrackle(クラックルノイズの除去)の3つの主要なセクションで構成されています。これらの3つのセクションはそれぞれ、長さが10msec、3msec、0.4msecまでのイベントを取り扱います。各セクションには独自のスレッショルドと感度コントローラーを備えており、励起プロファイルでは倍音成分が取り除かれた残りの信号成分を観ることができます。励起プロファイルは予測される信号からどれだけ変化したかを表すものです。スレッショルド・コントローラーでは検知されるイベントの数が決まり、感度コントローラーでは検知されたイベントのうち修復されるものの数が決まります。
イベントグラフ
イベントグラフは重要な視覚情報として、検知されたイベントをディスプレイ表示するものです。イベントの長さがX軸上に、大きさ/エネルギーがY軸上に表示されます。
グラフ上には、緑の泡(DePop)、青い泡(DeClick)、白い泡(DeCrackle)が表示されます。泡の大きさと水平軸よりも上の高さは音の大きさを表します。各セクションに備えられているINボタンを押すと、そのセクションの処理が無効となります。赤く表示される泡は、検知されたものの修復はされていない状態のイベントであることを意味します。
Exclude Box(除外ボックス)
Oxford DeClickerの個性的な機能のひとつにExclude Box(除外ボックス)があります。これは、検知したイベントを修復しないように格納しておくためのボックスです。オーディオ信号の修復においては、不要なノイズ成分の除去と、オーディオ成分から高域成分を除去してしまう現象との間の程よい妥協点を見つけることが重要です。
通常この妥協点を見つけるためには感度コントローラーを調整しながら探る必要がありますが、Exclude Boxは除外するイベントを設定することにより、そのプロセスを手助けします。例えば、制作した楽曲において、ブラスセクションのノイズ除去についてのみ満足できないような事例について考えてみます。ブラスセクションにおいて多数の大きなノイズ成分が検出されてしまったために、修復によって華やかさの無いサウンドになってしまったことがその原因と推測されます。また、ノイズとして検出されたイベントの一部が音楽に必要な成分であるため修復せずにそのまま残し、その他のイベントについてはノイズ成分として修復したい、という場合も考えられます。このような場合は、単純に修復しないイベントを囲むようにしてボックスを描きます。描いたボックスの枠内のイベントは赤く表示された状態となり、修復されなくなります。
ダイアローグ・モード
DeClickerの柔軟性を示す機能のひとつにダイアローグ・モードがあります。ダイアローグと背景音それぞれに対して、2つの異なるコントローラー群を別々に設定できます。
例えば、会話の最中と無言の部分に関して、スレッショルドおよび感度を全く異なるセッティングにしたいというケースが想定されます。ダイアローグ・モードではスレッショルドを設定することで、スレッショルドよりも上の’above set’と、スレッショルドよりも下の’below set’の2種類に分けて、全く別々のオーディオ処理を施すことができます。また、スレッショルドを決めるためにサイドチェイン・フィルターも使用可能です。
アウトプット
アウトプットパネルの試聴セクションでは、入力されたオーディオ信号とプロセッシング処理された出力信号との差分を聴くことができます。これには’Diff’とラベル付けされており、どの成分が修復されたかを聴いたり、オーディオ素材によって気をそらされることなく、純粋に修復のクオリティを確認するのに便利です。