良質なノイズ除去の鍵となるのは、ユーザーが望む正確な結果を得るための手助けをすることであり、過度なノイズ除去を助長することではありません。
Oxford DeNoiserは「ノイズ・プロファイル」のコンセプトに基づいて開発されました。周波数スペクトルにおいて、ノイズ・プロファイルよりも下の要素を排除し、ノイズ・プロファイルよりも上の要素を保持します。以下の幾つかの方法を用いて、適切なノイズフロアを得ることができます。
3種類の検知モード
AUTO: Autoモードでは、オーディオ信号の周波数スペクトルを自動的に調査し、常に存在する周波数スペクトル成分のレベルに着目することで、ノイズ・スレッショルド・プロファイルの全般的な形状を把握します。このモードにおいては、ノイズのスレッショルドとオーディオ信号の全体レベルとは相対的な関係にありますので、ノイズ除去のレベルは全体レベルに対して常に一定のデシベル値だけ下のレベルに固定されます。
FREEZE: Freezeボタンを使用すると、Autoモードで得たノイズ・プロファイルが固定され、それ以降の信号に対しては固定されたノイズ・プロファイルを適用することができます。背景ノイズのみの部分からノイズ・プロファイルを生成し、残りの部分にそのプロファイルを適用する、といった用途が有効です。Freezeモードの利点は、オーディオ素材のレベルが上がった場合でも常に一定のレベルのノイズ除去を適用するため、破壊的なノイズ除去が行われない点にあります。
MANUAL: ColourおよびAirコントローラーを使用して、シンプルに色分けされたノイズ・プロファイルを逐一指定するためのモードです。Colourコントローラーはホワイトノイズからレッドノイズまでのノイズ・プロファイルの形状を調整するもので、Airコントローラーは高域のノイズ・プロファイルの形状に修正を加えるためのものです。
多くの場合、実際の信号レベルに追従してスレッショルド・レベルが変化するAutoモードを使用することで、最善の結果が得られるでしょう。
微細なチューニング
DeNoiserには、バイアスカーブを用いて異なる周波数のノイズ・プロファイルにおけるスレッショルドを調節するためのコントローラーも備えられています。また、別のバイアスカーブを使用して、周波数帯域によるノイズ除去レベルを変えることで、幾つかの帯域では多めに、その他の帯域では控えめにノイズ除去を行うことも可能です。これらのバイアスカーブは、Auto、Freeze、Manual3種類全てのモードで機能します。検知されたスレッショルドやノイズ除去の量を操作するには、SmoothおよびTuneコントローラーを使用します。
DeHisserセクション
Oxford DeNoiserには、広域のノイズ除去セクションの前に専用のDeHisserセクションが設けられています。会話の録音など、残すべき高域成分があまり豊富に含まれておらず、ヒスノイズをクリーンレベルまで低減することが優先されるようなオーディオ素材に対しては、積極的に使用すると良いでしょう。
Mid/Sideモード
DeNoiserにはMid/Side操作を行うためのモードがあります。ステレオの信号におけるSide信号のみに対してノイズ除去を適用し、Mid成分はそのまま保持することができます。最初にステレオ信号をMS信号へと変換し、Side成分に対してのみノイズ除去を適用した後、ステレオ信号へと再変換します。放送コンテンツにおいてステレオ-モノラルの変換によって、支配的なノイズ成分があまり影響を受けないような場合に特に有効です。
Side成分に対してのみノイズ除去を行うということは、モノラルにおいては全く影響を受けず、ステレオにおいてはセンター成分には影響を与えずに、よりクリアなステレオイメージをもたらすことを意味します。ふたつめに、Mid-Sideマイキングによるレコーディングにおいては、Side信号は主にアンビエンスを捉えるために使用されますので、Side信号により顕著なノイズ成分が載ります。MSレコーディング素材がある時点でステレオ素材へと変換された場合でも、DeNoiserのMSモードを使用すればSide成分に対してのみノイズ除去を適用することができます。
Sweetening
ノイズ除去を施した後、除去した成分のうちの幾つかを元に戻したい場合も想定されます。例えば、オリジナルのオーディオに対してノイズ除去後のオーディオが少しフラットな印象になってしまったような場合です。Oxford DeNoiserのアウトプットセクションに設置された’Warmth’コントローラーを使用すれば、ノイズ除去後のオーディオ素材に簡単にリッチさをプラスすることができます。
Sonnox Restoreスイートの3種類のプラグインに共通して搭載されているオプション機能を使用すれば、入力信号とプロセッシング処理後の信号の差分である’Diff’信号を聴くことができます。これは除去されたノイズ成分を聴くのに便利な機能で、本来は除去すべきでない成分が誤ってノイズとして除去されてしまっている場合の確認にも役立ちます。