SPITFIRE AUDIO 初の制作となる、この「ドライステージ・アンサンブル・ライブラリ」は、映画音楽で活躍した奇才:バーナード・ハーマン氏にインスパイヤされています。「市民ケーン」「地底旅行」「サイコ」「めまい」「タクシードライバー」などの数々の有名で画期的な彼の遺作(スコア)は、近年のコンポーザーに今なお影響を与え続けています。
SPITFIRE AUDIO はこのライブラリを制作するにあたり、ハーマン氏の遺品を独占に入手し、氏の伝説的なオーケストレーションのこだわりを一つ一つ分析し、紐解きました。 本ライブラリはグラミー賞を受賞したオーディオ・エンジニアであるサイモン・ローズ氏(「アバター」、「グランド・ブタペスト・ホテル」、「スペクター」、「ハリー・ポッター」、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」など)と共に、AIR STUDIOS(ロンドン)のリンドハースト・ホールでレコーディングされました。きっとハーマン氏なら録るであろう荒々しく活気がありストレートなサウンドと、そして奏者のグループ編成、一風変わった楽器のコンビネーション、コード、エフェクト等、余すところなくハーマン氏のこだわりを再現しました。活気があり、そして独特なスコアリングを演出したいなら、この「コンポーザー・ツールキット」はかかせないひとつになることでしょう。
このコンポーザー・ツールキットは、全くもって “古いスタイルのライブラリ” ではありません。 SPITFIRE AUDIO はこのライブラリを制作するにあたって、ハーマン氏の遺品と密接に関わりながらスコアを研究し、氏のスコアを特別に仕上げるプロセスを紐解きました。それを念頭におき、「ハーマン氏がまさにここに存在している」かと思わせるような、それでいて音楽のジャンルを超えて使える近代的なライブラリに仕上げるため、多くのレコーディング・セッションを繰り返しました。AIR STUDIOS 1でレコーディングされた本ライブラリには、スタジオ・オーケストラ、トランペットやシロフォン、トロンボーンやティンパニなどのコンビネーション、ローピッチ・ストリングスとホルン、ハープとビブラフォン、更にはオンド・マルトノ、シンセ、パーカッション、ティンパニ等も収録されており、パンチを効かせるにはまさに全能ライブラリともいえるでしょう。
バーナード・ハーマン氏は現代の偉大なコンポーザーの一人です。氏のテレビやフィルム・スコアは単に有名なだけではなく、20世紀半ばの映画音楽の代名詞ともいえるでしょう。 「市民ケーン」のオーソン・ウェルズ氏、「タクシードライバー」のマーティン・スコセッシ氏とコラボレーションし、そして「めまい」「サイコ」「鳥」「マーニー」作曲のアルフレッド・ヒッチコック氏とは長年にわたってパートナーシップを結んでいました。 生み出されたハーマン氏の作品の規模は息を呑むほど偉大です。氏の作品は当時のフィルムスコアに大きな影響を与えただけでなく、近代ではクエンティン・タランティーノ氏の「キル・ビル」のツイステッド・ナーブのテーマで使用されるなど、近代においてもその存在感はスコアに更なる活気を与え、例えばあのキルビルの不気味なホイッスルは世界的にも誰でもすぐに気がつくようなサウンドになっています。
ハーマン氏は非常に独特な先例のないコンポジション・スタイルを確立していました。ハーマン氏のオーケストレーションは、氏の完全なオリジナルで、非常に大胆で独創的なものでした。常にそのフィルムに上手くフィットするサウンドを生み出し、そしてその後のフィルムスコアに多大な影響を与えました(例えば「サイコ」のフィルムスコアは、ホラー映画の新しい書法として有名です)。特定の楽器アンサンブルを使用したり(例えば「サイコ」のスコアは、ストリングしか使用していないことが有名で、「引き裂かれたカーテン」では12本のフルートを特色としています)、ユニークな楽器のコラボレーションなど(例えば「めまい」でのハープとビブラフォン、「北北西に進路をとれ」のミュート・ホルンとピチカート・ストリング)、その当時の体制に様々な挑戦を重ねました。それと同時に氏はスコアで電子楽器を使用し始め、それは当時とても先駆的でした。「地球が静止する日」での電子楽器オンド・マルトノや、「Sisters/Endless Nights」でのアンプされたMOOGシンセのサウンドは、同時の映画館では一切聞いたことのないような前衛的なサウンドでした。氏は更に他のハリウッドのコンポーザーたちが伝統的に用いていた迫力のある奏法は、自分が指揮するスコアの中ではやめるようリクエストし、そのスタイルはその後のパフォーマンスの変化に多大な影響を与えました。
ハーマン氏はいつも無限の好奇心と新しい音楽への情熱を持っていました。そのかたわら数名のコンポーザーたちをサポートしており、氏の努力によって彼らはその後誰しもが知るような有名なコンポーザーになっていきました。CBS交響楽団の指揮者としても活躍し、氏が作った多く楽曲をラジオ局が放送し、当時の幅広い聴衆に親しまれるようにもなりました。
ハーマン氏は自身の信念に忠実であり、そして芸術という不確かな存在の上に確固たる自身のパフォーマンススタイルを築きあげた偉大な人物です。氏は近代のコンポーザーの間でも尊敬され続けており、フィルムスコアに多大な影響を与え続けています。
だからもちろん、SPITFIRE AUDIO がハーマン氏の遺した偉大な財産とコラボレーションできると決まった時、あまりにも驚き感動してその場に崩れ落ちました。私たちは今現在忙しく働いているコンポーザーたちに、非常にユニークでバラエティー豊富な新しいサウンドと可能性を届けるべく、そして今回はハーマン氏の偉大なる才能とフィルムスコアへのアプローチをこのライブラリにあますことなく収録しました。