真剣に仕事の半分以上に使っている。これは恐ろしく優れた機材だよ。トラックを微妙に色付けするために今まで見つけた中で最も多機能なボックスで、すぐに欠かせないツールになった。Greg Calbi, マスタリング・エンジニア(Sterling Sound)
“少し変更したいことがあったから全部刷り直したんだ”と送ったら「一体何を変えたんだ?サウンドがすべて収まっていて完璧だ!これで校了、素晴らしいよ」と返事が届いた。「P331」を使った最初の顧客からのメモさ。- Ryan Freeland, ミキシング・エンジニア(Stampede Origin Studio)
「P331」を使う上で気に入っているのは、さまざまなソースにダイヤルアップしてゴージャスなエンハンスをかけるのが楽しくて簡単にできるところ、そして自分の耳と直感を信じることを促してくれる。- Kim Rosen, マスタリング・エンジニア(Bonnie Raitt, Bettye LaVette, Belly, Aimee Mann, The Milk Carton Kids)
「P331 Tube Loading Amplifier」は、トラッキング、ミックス、マスタリングを担うプロフェッショナル・エンジニアに、多用途でエレガント、正確で再現性の高いオーディオ回路のバリエーションを提供します。これらは高い忠実性を持つ真空管/ソリッドステート・ハイブリッドのオーディオ・エンハンスメント・デバイスです。
SOUL
1939年、ヨーロッパで第二次世界大戦が始まってわずか数週間後、「RCA Radiotron」は「6SN7」オクタル(8ピン)二重三極管をアメリカ市場に投入しました。これが、ハイファイ・アンプに使用される現代のすべての二重三極管の真の共通祖先の誕生です。「6SN7」が80年以上経った現在でも生産されているのには、それなりの理由があります。
1940年代のヴィンテージ「6SN7」真空管が「P331」のアンプに選ばれたのは、標準的でどこにでもある「12A*7」真空管を上回る低歪み性能のためです。「12A*7」真空管は、「より良く、より安く、より軽く」という商業的なニーズから生まれたもので、その代償として、より多くの歪みを有することになりました。フィードバックの出現によって、より安価な「12A*7」スタイルの真空管が大量生産されるようになり、真空管アンプは歪みを減らすために、より多くのフィードバック回路が使われるようになりました。
フィードバック回路は、歪みを減らす一方、アンプ全体のゲインを下げることになります。1950年代以前の真空管設計では、最小ゲインはまだ非常に高価だったため、フィードバックによってゲインを下げる(歪みを減らす)ことは異端とみなされたかもしれません。初期の真空管設計は意図的に低歪みになっており、これは特に1950年代の平均的なギター・アンプなどよりも要件が厳しい、変調ベースの通信システムにおいて重要な役割を果たしていました。
究極の回路トポロジーにおいては、どのような真空管設計においても通常より多くの第2高調波特性を引き出すことができます。可変回路トポロジーを採用している「P331 – Tube Loading Amplifier」では、ユーザーが必要に応じて特性の調整を行えるようになっています。
HEART
どのようなアンプであっても、真に優れたアンプであるためには、まずクリーンな電源から始めなければなりません。「P331」のリニア電源は、アンプ内の実際のゲイン構造と回路トポロジーに次いで、最も重要な「コンポーネント」です。高電圧のプレート/アノード管電源は、約320V DCから始まり、アクティブ・レギュレーターで最大6倍のフィルターで平滑化されています。高電圧電源からリップルとノイズを除去するために、フィルム・コンデンサーとリアル・インダクター(チョーク)のみを使用しています。
LOADING
ローディング回路は、完全差動(バランス)A級真空管アンプの一部です。この回路は、オーディオ信号が真空管のレスポンス・カーブの異なるポイントで当たるように設計されています。真空管を通してゲインが上がるにつれ、信号は等しく増えて行きます。これにより、聴感上のレベルの増減が最小限に抑えられ、レベルの急激な変化なしに真空管が与えるエンハンスを聴くことができます。
LOADING回路には2つの動作モードがあります。
「CLEAN」= フィードバック・モード – フィードバックの操作を利用して、真空管の内部ゲイン、微妙なノンリニアリティ、偶数次高調波に影響を与えます。
「BLOOM」 = フィードフォワード・モード – プレート・ローディングを操作して、内部真空管ゲイン、微妙な非線形性、偶数次高調波に影響を与えます。
AUTO-PADDING
「P331」のLOADING回路の重要な機能のひとつは、オートパディングです。真空管を通してゲインが上がると、信号は自動的に同じだけパディングされます(下がります)。これは非常に有効的な機能であり、本機のコンセプトに不可欠なものです。さらに有効的に機能するために、回路のどこでパディングを行うか(PREまたはPOST)、またはオートパディングをすべて無効にするか(OPEN)を選択できる機能を備えています。
「PRE」の場合、オートパディングは信号が真空管の前に行われます。
「POST」の場合、オートパディングは信号が真空管の後に行われます。
「OPEN」の場合、オートパディングは無効となり、Loadingノブで出力Gainを “マスターボリューム “として使いながら、ギターアンプのマスターボリュームと同じように音量を上げることができます。これは実験的な機能であり、活用法はあなたの耳に任せることになります。
LIFT CIRCUIT
P331のリフト回路(注:ブロック図に示される並列処理は、LIFT が作動している場合にのみ適用されます)
LIFT回路は、信号の高域、低域、または高域と低域の両方を強調する穏やかなパラレル・フィルターです。オーディオはLOADING回路の前にLIFT回路を通過します。LIFTフィルターのいずれかが作動している場合、オーディオ信号は完全にバランスされた「P331」回路を損失なく通過し、LIFT回路とLOADING回路が協調して働くハーモニック・コンテンツとブレンドされます。
XFORMER
「P331」の初期状態は完全にトランスレスで動作するように設計されています。これにより、最もピュアでクリーンなオーディオ経路が得られます。一方、P331の多用途性から、搭載する出力トランスを使って、これを二つの異なる方法でロードできるオプションを選択できます。それぞれオーディオに絶妙な質感を加えることができます。
OUTPUT GAIN
P331の真空管やその他の回路を通過するオーディオ信号を忠実に再現するため、出力ゲインセクションには低歪みフルバランス・ソリッドステートアンプを実装しています。出力ゲイン回路は1dB刻みで11dBのブースト/カットが可能です。さらに細かいコントロールが可能な “Resolution “スイッチにより、現在の設定値から0.25dBまたは0.5dBを 「戻す」ことができます。(設定“0”の場合は、0.25dBまたは0.5dB「加算」)
HARD-WIRE BYPASS
P331の各セクション(ローディング回路を除く)は、完全にハードワイヤー・バイパスにすることができます。また、ユニット全体をシグナル・チェーンから外すグローバル・ハードワイヤー・バイパスもあります。
BRAINS
Whitestone Audioは、ヴィンテージ・アナログ・テクノロジーを、コンピューターによって最適化させた最高峰の回路設計と融合させ、ヴィンテージ真空管が開発された当時には想像もできなかったレベル精度と明瞭度を実現しています。
P331は、完全にデジタル制御されたアナログ機器になり、P331のフロント・パネルにはオーディオ回路はありません。ロータリー・スイッチとトグル・スイッチによって設定された各パラメーターの値は、80個以上の密閉型精密リレーがコマンドを受け取りアナログ回路の制御と再現を行います。オーディオ・パスには全体を通して最高級のコンポーネントのみが使用されています。
僅か1dBの違いがすべてを左右する世界で人生の大半を過ごす稀有な存在、マスタリング・エンジニア達の環境で活躍するための機器として設計された「P331」は、完璧なミックスをより良いものにするための仕上げに行なわれるファイナル・タッチを特別かつ、控えめな方法で強化する機器として、世界中のマスタリング・エンジニア達のワークフローに追加されるギアになりました。その一方、「P331」を使用したミキシングのエンジニア達からは、より明確なサチュレーションとハーモニクスのカラーを求める声が届いていました。このフィードバックを元に新しく完成した「P331- EVL」は、「P331」の魔法を失うことなく、これに寄り添うもうひとつのソリューションです。オリジナル「P331」が持つすべてを備えながら「P331-EVL」は、よりダイレクトに、より前に出るサウンドを表現できるように設計されています。
「P331」と「P331-EVL」の違いとは?
まずは同じところから見ていきましょう。オリジナルの「P331」と同様、「EVL」バージョンはすべてのコントロールにデジタル制御のアナログを採用しています。左右のコヒーレンスは正確そのもので、完全差動のソリッドステート出力アンプにも変更はありません。LIFT回路も両機で同じですが、リフトされる周波数はローディング・セクションで発生する倍音の影響を受けるため、「EVL」のLIFTはオリジナルの「P331」とまったく同じ音にはなりません。
「EVL」の完全差動真空管のLOADINGアンプは、かなり異なる点からスタートします。「EVL」のLOADINGのコントロールは、「6SN7」真空管の動作ポイントをコントロールするという点ではオリジナルの「P331」と機能的には同じですが、最初からかなり強くプッシュされています。もちろん歪んだギター・アンプとは異なり、単に、オリジナルの「P331」とは異なる「より前進した感じ」になっているということです。
「XFORMER」セクションは、最も差別化が図られている部分です。「EVL」のトランスにはより多くの電流を流して飽和状態を作り出しています。その結果、息苦しさや明瞭度の損失なく、ローエンドの存在感、力強さ、パンチがより際立つようになっています。