MA5 は 1970 年初期の Neve コンソールのサウンドを目標に開発したマイクプリアンプだ。私は長い間ハリウッドの Brent Averll 社でチーフエンジニアとして数多くのアメリカ製、イギリス製のビンテージ・コンソールのメンテナンスとラック改造を手掛けてきた。それらのコンソールにはトランスを使ったバランス回路をはじめ、HiFi サウンドの再生のために考え抜かれた多くのディスクリート回路が採用されている。私は MA5 の開発にあたり、これらの優れたコンソールから学んだ様々な技術を再構築し、コストを度外視したパーツの選別などで試行錯誤を繰り返した。実際、MA5 の完成には 1 年以上の時間を費やしたが、それはエンジニアとして回路設計やパーツの選別はもちろん、ミュージシャンとしての視点からゲイン設定などの操作性や機能、そしてより良いサウンドを得るために時間を掛けて試聴を繰り返したためだ。高性能な計測器の測定値は確かに役だったが、耳での試聴と経験に基づく判断が最も大切なことだよ。結局のところ私の機材開発の最終的な目的は私達の「耳」を満足させることだからね。MA5 のワイドレンジで開放的なサウンド、特に 10Hz まで再生する低音のすばらしさは豊かなハーモニックスによるもので、中域はクリアー、高域はスムーズでエッジがぼやけたりサウンドが濁ったりすることはない。
MA5 の入力はマイクレベルに設定されているが、LINE PAD-Z(別売)を接続するとラインレベルの信号も入力可能となり、解像度が高いすばらしいサウンドのラインアンプとして使うことも可能だ。MA5 を通すことで元のサウンドにハーモニックスを加えたリッチな低音を与えることができる。
28kHz ブースト回路は、E27 イコライザーの 28kHz をブーストしたサウンドがとても良かったので、MA5 にも搭載することは最初から決めていた。この回路には 28kHz の帯域を 6dB ほどブーストしシェルビングする働きがある。スイッチをオンにすると楽器のリアリティが増し、サウンドに命が吹き込まれる感じがする。この効果に気づいたのはオーケストラのライブレコーディングで、ステージのサウンドとホールの残響音を捉えて空間の広がりや深みを見事に再現していた。アコースティック・ギターではその音色の高域のニュアンスを、ドラムでは特にルームマイクが自然な高域の反射音をより良く捉えることができる。ボーカルでは「サ行」の歯擦音の周波数を上げることなく歌手の距離を近づけることができるから、高域がブライトな傾向にある最近のコンデンサーマイクにも良くマッチし、EQ での音作りも最小限の操作で良いくらいにスムーズになる。(アヴェディス氏のコメント)

