英国アビイ・ロード・スタジオはCHANDLER LIMITEDと共同で、歴史的なコンプレッサーの名機”RS124”を、初めて正式に復刻しました。
ALTEC 436を当時のEMIのエンジニアが独自に改良し、新たなコンプレッサーとして開発した製品がRS124であり、1960年代のビートルズの録音で使用されたものです。
RS124は「EMI」そして「ABBEY ROAD STUDIO」のオフィシャル・ハードウェアー・イクイップメントです。
RS124 コンプレッサー
1960年代のザ・ビートルズの録音で活躍した RS124 真空管バリアブル・ミュー・コンプレッサーが、50年以上の時を経て、初めて「公式に復刻」されました。ALTEC 436を当時のEMIのエンジニアが独自に改良し、新たなコンプレッサーとして開発した製品がRS124であり、英国アビイ・ロード・スタジオで1960/70年代に行なわれた、ほとんどの録音で使用されました。
世界で唯一、アビイ・ロード・スタジオとの業務提携を行っているチャンドラー・リミテッド社は、実在する何台かの実機、当時の手書きのノートや回路図などを徹底的に調査し、その歴史的な実機が持っていた個々のサウンドの違いまで完全な再現を行いました。また可変アタックなど、近代のレコーディング環境でも使いやすくなるよう、ビンテージ・サウンドはそのままに、機能性をアップさせています。
REDD.47 Pre Ampに続いて、RS124が復刻されたことで、ザ・ビートルズやピンク・フロイドに代表されるあの歴史的ロックサウンドが、プラグインの擬似的なサウンドではなく、当時のままのハードウェアーで再び鳴らされることは、とても大きな価値のあることです。
RS124は「EMI」そして「ABBEY ROAD STUDIO」のオフィシャル・ハードウェアー・イクイップメントです。
© 2015 Chandler Limited, Inc. All Rights Reserved. RS124_UM_102515
Abbey Road Studios, EMI, RS and their associated logos are trademarks of EMI (IP) Limited.
RS124の歴史について
アナログ・ハードウェアーによるシグナル・プロセッシングが世界的に見直されている中、イギリスのアビイ・ロード・スタジオは、CHANDLER LIMITEDと共同で、歴史的なコンプレッサーの名機”RS124”を、初めて正式に復刻しました。
RS124の最初のデザインは、当時アビイ・ロードの技術チームの主任であったBill LiveyとLen Page、そしてEMIオーディオ開発のデザイナーだったMike Batchelorらによって設計されました。今までに設計されたどんなコンプレッサーよりも、重要な意味を持った1台でした。
1950年代の終盤に、EMIはALTEC社の真空管コンプレッサーを導入していましたが、より高品位なレコーディングには不十分なサウンドしか得られないことにすぐに気がつきました。EMIオーディオ開発はALTECの真空管コンプをベースに、全く新しいコンプレッサーとしてEMI/Abbey Roadの名を冠した”RS124”を完成させたのです。
RS124は導入されて間もなく、アビイ・ロード・スタジオのサウンド・エンジニアたちにとって特別な機材となりました。それはサウンドを均一にするといったコンプレッサーの役割以上の、素材をどう調理していくのかといった領域に踏み込んだ機材でした。RS124だけが持つ、サウンドを際立たせる個性的なキャラクターが、個々の楽器、リズムセクション、そしてミックス全体のサウンドを飛躍的に向上させたのです。RS124はアビイ・ロード・スタジオの録音やミキシングのプロセスに多大な影響を与えたChandler Limited,RS124,ALTEC 436,真空管コンプレッサー,ビートルズ コンプレッサー,BEATLES録音機材,機材であり、1960年代には同スタジオの全てのコントロール・ルームにインストールされていました。
RS124はほぼ全てのザ・ビートルズのレコーディング・セッションで使用されました。元々はアメリカのモータウン・レーベルの作品のベースサウンドに魅せられたポール・マッカートニーのために、モータウン・サウンドの要であるALTEC436をアップグレードしたものがRS124です。ビートルズ作品の中期から後期にかけて、RS124を通した、太く瑞々しいポールのベースサウンドを聴くことができます。
RS124の復刻について
今まで多くの完璧でない情報や想像、仮定の中で、RS124のレプリカと銘打った製品が作られてきましたが、本物は一つとして作られていませんでした。
今回、RS124の復刻にあたって、アビイ・ロード・スタジオとCHANDLER LIMITEDの共同開発チームは、回路図をアビイ・ロード・スタジオに存在している歴史的な実機から、そして当時の手書きのノートから正確に再現しまし た。さらに何台か存在するRS124のそれぞれの微妙な違いまでもを正確に再現しようと試みました。
アビイ・ロード・スタジオのオフィシャル・イクイップメントを世界で唯一開発・製造・販売できるCHANDLER LIMITED社は、この世界で最も歴史のあるレコーディング・スタジオに実存する貴重な実機や、今まで誰も触れたこともないような貴重な資料にアクセス し、アビイ・ロード・スタジオのサウンド・エンジニア達との試聴テストを繰り返し、ついに RS124コンプレッサーを現代に甦らせました。
このRS124は歴史的価値のあるRS124を正確に再現しただけでなく、現代のレコーディング環境でも使いやすいよう、さらに発展させたものです。
「このプロジェクトが開始されて間もなく、私たちは現存するそれぞれのRS124に違ったキャラクターやニュアンスがある事に気がつきました。その時点で全てのRS124の個性的なサウンドは、1つの筐体に収められるべきだと考えたのです。新しいRS124ではアビイ・ロード・スタジオに実在する全ての個体のRS124のサウンドが再現できます。」とChandler LimitedのデザイナーであるWade Goeke(ウェイド・ゴーク)は述べています。結果Chandler Limited RS124ではフロントパネルからそのシリアル番号を切り替え、いくつかのRS124のキャラクターを切り替える事ができます。
またオリジナル機からのアップグレード点もあり、可変のアタック・コントロール、200/600オームのインピーダンス切り替え、特別な” Super Fuse”の搭載などが新たに加えられています。
この歴史的な機材の復刻について、アビイ・ロード・スタジオのMirek Stiles氏は、「1999年にRS124を改めて聴いた時は、確か技術担当のLester Smith氏がこの機種を聴く機会を与えてくれました。その時点でおおよそ20年間以上その機材は大事に保管されていたのです。しかし驚く事にRS124は完璧に動作していました。すぐに機材をセットアップして試してみたのですが、そのサウンドが今までに聴いてきたどんなコンプレッサーとも異なる素晴らしいサウンドであることに一瞬で気がつきました。
そんな歴史的な機材が2015年にまた復活して、世界中のエンジニアやミュージシャン、プロデューサーがトラッキングやミックスに使用するなんて最高の出来事です!当時の手書きのノートや技術的な資料を細かく調べていくうちに、初めてこのRS124の本当の姿が見えてきたのです。私自身、この新しいCHANDLERのRS124とオリジナル・ユニットを比較試聴しましたが、設計チーフのウェイド・ゴーク氏は、そのキャラクターを見事に再現したと断言できます。アビイ・ロード・スタジオのエンジニア達は、彼らがRS124のプロトタイプを完成させた時点から、そのサウンドに惚れ込みミックスバスに早速使用していました。本物の価値のある機材です」。
RS124の機能について
POWER
Chandler Limited RS124 はパワーサプライを内蔵しています(外部パワーサプライは不要です)。
INPUT/OUTPUT
RS124のオーディオ入出力はXLR仕様(2番ホット、+4dB、トランスフォーマー・バランス)です。
出力インピーダンスは600または200オームにスイッチで変更が可能で、トーンやゲインの変化が得られます。600オームのセッティングは近代的なスタジオ環境では標準的ですが、アビイ・ロード・スタジオでは200オーム・セッティングを標準としています。
STEREO LINK
Chandler Limited RS124は、1/4”のケーブルを使用して、2台をステレオ・リンクできます。ステレオ・リンクされても各コンプレッサーのコントロールは有効です。
BAL.
BALどんなプッシュ/プル回路のアンプ設計でも、経年変化によりプッシュ/プル・バランスが変化し、予期せぬ音質への影響が免れません。全ての真空管式のコンプレッサーに同じことが言えます。プッシュ/プル回路がアンバランスになった場合、サウンド(特に低域)にごく僅かなブレやディストーション、またはモジュレーションが生じます。
BAL.スイッチは回路上のプッシュ/プル・バランスを再調整できる優れた機能です。BAL.スイッチを押しているあいだに「クリック音」が出力されます。スイッチ上のトリムをマイナスドライバーで調整して、「クリック音」が最小になるよう調整を行います。その状態でリバランス調整が行なわれた状態です。
HISTORIC NOTE: 初期のRS124にはBAL.機能はありませんでしたので、通常の真空管コンプレッサー同様に定期的に技術者がリバランスのメンテナンスを行う必要がありました。セッション中にその必要性が出てしまう場合などは厄介で、セッションを中断しなくてはなりませんでした。当時のエンジニアLen Page氏はネオンバルブとモメンタリ・スイッチ、そしてトリムポットを利用した、小さなバランシング回路をRS124に追加搭載することを思いつきました。 |
モメンタリー・スイッチを押している間「クリック音」がプッシュ/プル両側のアンプに逆相で送られるので、トリム調整によってクリック音が一番小さくなるように調整するだけで良いのです。セッション中であっても極めて簡単な調整でリバランスをとれるため重宝された機能になりました。
INPUT CONTROL
“INPUT CONTROL” は、可変式(*)の入力レベル調整です。0~10と記載されています。入力レベルとスレショッルドをコントロールします。
*ステップ式のインプット・コントロールをご希望の場合は、ご購入時に特別オーダー(オプション別料金)も可能です。
OUTPUT ATTENUATOR (db)
‘OUTPUT ATTENUATOR (db)’ は可変式(*)の出力レベル調整です。値0~-10で調整が可能です。
*ステップ式のアウトプット・コントロールをご希望の場合は、ご購入時に特別オーダー(オプション別料金)も可能です。
ATTACK
RS124にはオリジナル機には搭載されていない、アタック・コントロールが装備されています。アタック・コントロールは9ポジションが用意されています。左側のポジション1が最も速いアタックタイム、数字が大きくなるにつれ遅いアタックタイムになっていきます。
またRS124にはアビイ・ロード・スタジオに実在する3台のRS124コンプレッサーが持つそれぞれのサウンドを、このスイッチのポジションに赤色の文字で記載された「シリアル番号(60070B, 60050A, 61010B)」で選択することができます。ザ・ビートルズをはじめとする様々なロック・レジェンド達が使用したRS124のサウンドを、そのシリアル番号別に再現することが可能です。
HISTORIC NOTE: ロック史上においても貴重なユニットであるアビイ・ロードのRS124は1台1台ごとに個性をもっていました。ですからアビイ・ロードのサウンドエンジニア達は、セッションごとにRS124をシリアル番号で指定して使用していました。オリジナルのRS124はアタックタイムが固定で、その1台1台がそれぞれの値を持つよう設計されていたのです。 |
RECOVERY
“RECOVERY”は11ポジション(ステップスイッチ式)のリリースタイム・コントロールです。“RECOVERY”スイッチは、6つのリカバリー、またはリリースタイム・オプション用意し、最も遅いリリースタイムがポジション6位置、速いタイムはポジション1位置です。
また5つの赤色のドット位置は“HOLD”ポジションです。“RECOVERY”スイッチをどのHOLDポジションに合わせた場合でも、音源を最も直近にプロセスしたピークレベルで保持します。
HISTORIC NOTE: “HOLD” は独創性のある機能です。高いピークがあった場合に素早く近くのHOLDポジションにノブを合わせることで、コンプレッション・レベルを保持(プリセット)することができるようにしたものです。 レベルが急激に下がるような静かなパッセージでは、レベルがコンプレッションのスレッショルドを下回るため、サウンドエンジニアはスイッチを近くのHOLDポジションにセットして、楽曲の静かな部分が終わるまで保持するように使用していました。 |
SUPERFUSE
フロントパネル上のFUSE(ヒューズキャップ)は実は隠しスイッチになっています(本当のヒューズはリアパネルにあります)。‘SuperFuse’モードはこのスイッチを左側にセットした場合にアクティブとなり、RS124のパワーライトがより明るく点灯します。
‘SuperFuse’ モードは、RS124のパーソナリティを変化させるモードで、全体に速く、アグレッシブな動作になります。‘SuperFuse’ モードがオンの状態ではサウンドがより活き活きとして、モニターから飛び出してくるようなアグレッシブな音像になります。